吉例顔見世大歌舞伎 夜の部 2005.11.5 [歌舞伎]
今日から私の中での週末ごとの怒涛の歌舞伎週間が始まる(笑)
これって多分12月までだろうなぁ~。
私ったらいったい年間何本観たら気が済むんでしょう…
本日のお席は3階11列36番。
もう少し後ろの方が花道は見えるんだけど、今日のお席でもギリギリは観られた。
●「日向嶋景清」(ひにむかうしまのかげきよ)
今年4月のこんぴら歌舞伎で初演された演目。
吉右衛門が松貫四というペンネームで書き上げた父と娘の親子愛の物語だ。
この演目はこんぴら歌舞伎の時にも拝見しているが、やはり歌舞伎座の舞台で観るのは別の感動があった。
広い舞台の中央にちょこんと立っているみすぼらしい庵が、悪七兵衛景清(吉右衛門)のうらぶれた姿をよりいっそう寂しく見せる。
かつて勇名をはせた悪七兵衛景清の姿は、戦の虚しさ、そして哀しさを感じさせるものだ。
二歳の時に生き別れた娘の糸滝は、こんぴら歌舞伎では信二郎の息子(隼人)が演じていたが、今回は芝雀が熱演している。
隼人の糸滝も健気でとても可愛かったが、芝雀はさすがに上手さと上品さが備わっていていかにも元武家の娘といった風情だ。
一時は太ってまん丸になっていた顔もすっきりとして、娘らしさがよく出ている。
私生活では最近再婚したらしいが、これで更に演技に磨きがかかってくるのかなぁ~。
肝煎佐治太夫(歌昇)はこんぴら歌舞伎の時にも見せてくれた、落ち着きのある懐の深く情のある役どころを演じている。
歌舞伎ではとかく一癖も二癖もある人柄に描かれる遊女屋の斡旋を生業としている役どころだが、今回のこのお役に関していえばとても人の良い情け深い人柄である。
考えてみたら、この演目には嫌なヤツっていうのが皆目出て来ない…
それがかえって父親である景清が娘につれなくする様を哀しい姿として浮き立たせていたように思う。
里人実は土屋郡内の染五郎と里人実は天野四郎の信二郎は里人の姿はしていながらも、あの美しさと精悍さは「これは絶対に里人じゃあないだろう~」というのが見え見えだ(笑)。
それにしても、染五郎はこの演目ではまるで「素」になっているように見える。
立ち姿とかジッと座って景清を見ている場面では、完璧に「素」に見えるのだ。
悪くいえば緊張感が無いっていうか…(笑)
とにかく吉右衛門をジーッと観察しているように思えるんだけど~。
染ちゃん、おじさんの演技を勉強中ですな(爆)。
景清が実は娘が用意してくれたお金は身を売ってのものだったと知り、娘の乗った船に向かって「その子は売るまじ~」との叫びは声こそは絶叫とまでにはなっていないが、それがかえって彼の心の叫びを現していた。
目が見えない景清が娘の乗った船とはまるで違った方向を向いて嘆いている姿は何とも切ない。
ああ、やっぱり吉右衛門は上手いなぁ~。
今回もこの場面ではウルウルしてしまったよ…
浄瑠璃も竹本清太夫だったので、彼のあの「必死に唄う」といった感じがこの場面にピッタリだった。
あれほど頑なに源氏に屈することを拒んできた景清も、とうとう土屋郡内と天野四郎の勧めを受け降参を決意する。
それは娘を売るまいとした親心、そして戦いの虚しさを知ってのことなのだろう。
自分が意地を通した為に健気な娘は身を売ってしまった…
最も大事にすべきは武将としての意地や忠義ではなく、自分の守るべきもの、すなわち娘なのだということを悟ったのだと思う。
鎌倉へと向かう船の中、それを悟った景清は何とも晴れやかな顔をしていた。
●「鞍馬山誉鷹」(くらまやまほまれのわかたか)
・中村大改め初代中村鷹之資披露狂言
今井豊茂が中村富十郎の長男、中村大改め初代中村鷹之資(なかむらたかのすけ)改名披露のために書き下ろした一幕。
紅葉の鞍馬山が美しい。
源牛若丸(鷹之資)の一生懸命見得を切ってる姿はとってもカワイイね。
今まで歌舞伎では牛若丸の髪型はポニーテールでは無かったとのことだが、NHKで現在やっている「義経」でタッキーがポニーテールにしていたことから今回の鬘はポニーテールになったらしい(笑)
まぁ、その方が可愛らしいとは思うけど…
富十郎は完全に父親の目(笑)。
鷹之資の立ち回りでは、もうドキドキハラハラって感じが観ているこちらにまで伝わってくる。
総勢18名という楓四天との立ち回りは実に華やかだ。
それにさすがに披露狂言なだけあって、出演陣が豪華!
鷹匠の富十郎はもちろんのこと、平忠度の仁左衛門、喜三太の梅玉、蓮忍阿闍梨の吉右衛門、常盤御前の雀右衛門、それに鷹之資の後見として信二郎。
口上の間もずーっと正座をして下を向き手を着いていなければならない鷹之資は、さすがに後半になってくるとチョコチョコと上を向いたり下を向いたり…(笑)
きっと苦しいのだろうね。
鬘を付けて下を向いて正座するって大変そうだもんねぇ~。
仁左衛門って本当に歳を取らないのねぇ~。
あのお歳でこの美しさったらビックリ!
お目出度さたっぷりの楽しい演目だった。
●「連獅子」(れんじし)
白い毛の手獅子を持った狂言師右近(幸四郎)と赤い毛の手獅子を持った狂言師左近(染五郎)が登場し、右近は親獅子、左近は仔獅子になりきり、親獅子は仔獅子を石橋から突き落とすという伝説を舞う。
やがて2人は獅子の精に姿を変え、勇ましく舞い踊るのだった。
間狂言の宗論(信二郎・玉太郎)が楽しい。
染五郎の年齢から言っても「仔獅子はどうなのよ~」と思っていたのだけれど、意外にもちゃーんと仔獅子になっていて若々しく可愛らしい(笑)。
幸四郎の親獅子も深い愛情溢れる眼差しの何とも男らしい獅子の姿。
それにしてもこの2人の連獅子は美しいねぇ~。
後半の獅子の精になってからの染五郎の動きは素晴らしいものがあった。
牡丹の雫を浴びている場面の細かな顔の動きはまさに「獅子」そのもののようで、そこに獅子が見えた思いだ。
いかにも血気盛んな若獅子という感じの猛々しい踊りで、最後の毛振りは圧巻!
あの「首ももげんばかり」に振る様は、腰もしっかりと入っていて見事だとしか言いようがなかった。
観客もその見事さに感嘆の声をあげ、拍手も凄く染五郎贔屓としては何とも嬉しかった(笑)。
ああ、この連獅子の染ちゃんを観られただけでも今日は満足だね。
間狂言の法華の僧蓮念の玉太郎、浄土の僧遍念の信二郎の2人は声の通りがとても良く台詞も聞き取り易い。
ただ、信二郎に比べてしまうと、玉太郎の踊り、台詞回しともに若干硬さを感じてしまう。
ひょうきんな表情を作るのはとても上手い方なので、もう少し柔らかさが出てきたら更に良くなってくるだろう。
●「大経師昔暦」(だいきょうじむかしごよみ)
大経師の以春(段四郎)の家は暦の発送の真っ最中だが、以春は妻のおさん(時蔵)の隙を見ては、女中のお玉(梅枝)に言い寄っている。
その夜、以春がお玉の寝床を訪ねると知ったおさんは、お玉とすり替わって寝所に潜むのだが、そこへやって来たのは、以春ではなく手代の茂兵衛(梅玉)。
おさんに金策を頼まれ、以春の判を使ったことを番頭の助右衛門(歌六)に糾弾された茂兵衛は、それを救おうとしてくれたお玉に、お礼をしに来たのだった。
お互いそうとは知らずに、密通してしまったおさんと茂兵衛。
いかにも近松らしい悲劇の世話物だ。
時蔵のおさんが本当に美しく、艶やかだ。
この人はなぜ最近こんなに綺麗なんだろう…
息子の梅枝も綺麗ではあるが、この人の美しさには到底及ばない。
お玉に自分の旦那が毎晩のように言い寄ってくる…と聞かされる時の時蔵の表情が細やかでとても良い。
驚きから怒りへと変わっていく様は見事だった。
お玉の梅枝も先月の国立劇場に引き続き、熱演している。
まだまだ硬いけれど、その硬さがウブな娘といった感じを醸し出していた。
段四郎の以春はいかにも「スケベなオヤジ」といった風情で似合いどころだ(笑)。
助右衛門の歌六、この人はこういう憎々しいお役はピッタリだねぇー。
お玉の部屋に忍んで行く場面では笑いを誘い、哀しい話に微かな笑いを齎してくれる。
茂兵衛とおさんが互いに知らずに密通してしまった…という場面での2人の狼狽振りはとても良かった。
物干し竿の影と重なった2人の姿が「はりつけ」の姿に見える…という演出も心憎く、この2人の哀しい定めを暗示しているかのようだった。
いかにも大人の物語といった感じのこの演目は夜の最後を飾るにはふさわしいだろう。
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一 松貫四作「日向嶋景清」 某国営放送の「芸能花舞台」だったと思うのだが、松本幸四郎さん(通称は『幸四郎パパ』)が お父様の舞台を紹介するという回があった。 この中の白黒映像が、「嬢景清八嶋日記」という文楽の方と共演されたお芝居だった。 瞬間的にパッと出ただけだったのだが、先代幸四郎さん…[続く]










こんばんは。先日はご訪問ありがとうございました。
同じ演目のはずなのに、こんなに細やかに鑑賞されているとは!おのれの感想に反省しきり……それにしても、本当にたくさんの舞台に足を運ばれているんですね。こんぴら歌舞伎にも行かれているとはうらやましいかぎりです。
近々、「大経師昔暦」についてもアップ予定です(またもや変な感想になりそうですが…)。よろしければ、またいらしてください♪
by air (2005-11-09 00:33)
air様
ようこそおいで下さいました~\(^o^)/
airさんのレポ、とっても面白かったですよー。
同じ日に歌舞伎座におられたのですね。
雀右衛門さん、名前忘れちゃってましたよねぇ~。
私も「えっ?!わ、忘れた?!」と思いながらハラハラして観てましたもん。
私は昨年の夏以来歌舞伎にハマっているので、今はたくさんの舞台を拝見しようと思っているんですよー。
こんぴら歌舞伎はご贔屓の染五郎さんが出演なさったので、意を決して行ってしまいました。
まだ歌舞伎を観る前から、あの金丸座には興味があったので…
「大経師昔暦」のレポも楽しみにしていますね。
また遊びに行きます!
最近は
by 愛染かつら (2005-11-09 01:15)
いえいえ、こちらこそお世話様です。
トラックバックさせていただきました。
ペコリ
by (2005-11-10 20:11)
もーもー様
TBありがとうございます。
もーもーさんのレポはとても的確なので、皆さんに読んで頂きたいです。
by 愛染かつら (2005-11-11 01:24)
こんばんは☆歌舞伎座夜の部は25日に行く予定です。今日は国立劇場で絵本太功記を観てきました。少し地味な配役(失礼!)かなと思いましたがなかなかでした。ただ少し長いですね。
by Ren (2005-11-11 23:34)
Ren様
わー、Renさんは国立に行ってこられたのですねー。
私も先月の国立に行った時には「長いし、疲れたよぅー」とグッタリしてしまいました(笑)
通し狂言は拝見する方も集中力が要るので、やはり疲れますね。
今月は国立はパスしてしまいます。
歌舞伎座夜の部は楽日ですかー。
きっと気の入った素晴らしい舞台を見せてくれるでしょうね。
私は19日に再見する予定です。
by 愛染かつら (2005-11-12 01:44)