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コクーン歌舞伎「三人吉三」 夜の部 2007.6.9 [歌舞伎]

今年もコクーンに行ってきた。
幸いにして今私が住んでいるところは、Bunkamuraに徒歩10分程度で行ける距離なので、まさに近所までのお散歩感覚だ。
過去3回とも平場席だったが、やはり疲れるので今回は椅子席にすることにした。
本日のお席は中2階 MR列16番。
前にある手すりが少々邪魔だったのと、舞台上手は若干観切れるが、思ったほど観辛いお席でも無かった。
それにしても立見の方の多いこと…
途中に2回の幕間があるとはいえ、さすがに立見は疲れるだろうなぁ~。

この後、ネタバレ多々ですので、これからご覧になる方はご注意下さい。

 

●三人吉三(さんにんきちさ)
序幕
・安森屋敷塀外の場
安森源次兵衛は将軍家からお預かりの刀、「庚申丸」を盗賊に奪われる。
「庚申丸」を奪った盗賊は野良犬に追われ、この犬を殺した時に刀を川へ落としてしまう。

幕が開くと舞台上手から下手にかけて、一匹の犬がツツツーッと横切る(笑)。
このタイミングが絶妙!
演出家の串田さん曰く、「どうしても野良犬を出したかった」そうで、確かに野良っぽい感じはするが、それにしてもキレイ過ぎ(笑)。
他にも数匹のぬいぐるみの犬が出ていたが、やはり本物に勝るものはないねぇ。


・湯島松金屋前より柳原辺りの場
「庚申丸」は川底から発見され小道具商の手に渡っていた。
海老名軍蔵は安森家への遺恨の為、高利貸し太郎エ門から百両を借り、「庚申丸」を買い取る。
木屋文蔵は手代の十三郎へ「庚申丸」を持っていかせ、百両を受け取った十三郎は帰り道に夜鷹のおとせと会い、枕を交わしてしまう。


花道変わりの下手通路からは、高利貸し太郎エ門の勘三郎。
そして上手通路からは、研師与九郎の亀蔵が登場。
勘三郎の太郎エ門は、肉襦袢を着て、頬には綿を詰めているので、もう誰だかわからない状態(笑)。
途中、英語で喋り「これは来月だった…」と、さりげなくニューヨーク公演を宣伝!
亀蔵は「庚申丸」という言葉から、加山雄三の唄、更には青大将こと田中邦衛のモノマネまでしている。
さんざんモノマネをした後に、勘三郎から「もう、ええか?!」と関西弁でツッこまれる。
この遣り取りは前回コクーンでやった三人吉三でもあったと記憶しているが(映像で拝見)、さすがに田中邦衛のモノマネは今回は初だったのではないだろうか(笑)。

海老名軍蔵は、橋之助。
が、これがもう本当に橋之助なの?!と疑うばかりの変わりよう…
化粧もそうなのだけれど、出っ歯なのよ、出っ歯!
まるで明石家さんま!(爆)
この出っ歯の入れ歯も、前回は無かったよなぁ~。
それにしても日頃の2枚目とは打って変わった姿に、実に楽しそうな橋之助。

おとせは七之助。
この七之助のおとせが何ともいえなく良い。
夜鷹らしく伏目がちな薄幸そうな表情、そして十三郎と目が合った時の運命の人と思ってしまったのだろうと思わせるパッと光が差したような瞳。
それを受けての十三郎の勘太郎の表情も素晴らしかった。
この後の2人の悲劇を暗示させるような、そんな出会いの場だった。

この場面では、小山三が夜鷹のどろ亀おさんとして出ていて、元気な姿を見せてくれた。

また、安森の若党弥作には、珍しく芝のぶが立役として出ていて、これがなかなか良かった。

この場では、黒衣が活躍する舞台効果も素晴らしかった。
青い水面を黒衣が動かして、そのユラユラとした光が舞台に映し出される。


・両国橋西川岸の場
十三郎は夜鷹のおとせと遊んだ際に百両を落としてしまい、身投げする覚悟で両国橋にやって来るが、通りかかったおとせの父の土左衛門伝吉に、その百両ならおとせが拾ってきたと教えられ、喜んで土左衛門の家へ向かう。


百両を落としてしまったと、通路を項垂れて登場する十三郎。
そのまま通路を行かずに客席をウロウロと…
お客さんは自分の荷物をアセって動かしている(笑)。
なかなかスムーズに通れない様が、十三郎の落胆振りを感じさせる。


・大川端庚申塚の場
十三郎が落とした百両を本人に届けようと大川端まで来たおとせは、八百屋お七を気取った女装の盗賊お嬢吉三にその百両を奪われ、大川に突き落とされてしまう。
それを見ていたご家人崩れの盗賊お坊吉三はお嬢から百両を横取りしようとするが、そこへ吉祥院の所化上がりの盗賊和尚吉三が来て仲裁に入り、百両を預かったうえ、三人義兄弟の契りを交わす。


下手側通路から七之助のおとせが登場すると、私達が座っていた右袖のすぐ前を福助のお嬢が通って行く。
1階椅子席の後方からの登場だったようで、床が傾斜しているせいか、もうすぐ手が届きそうな位置に福助の顔があってビックリした(笑)。
福助のお嬢は、可愛らしい声といい、本当に娘のよう…
が、一変、おとせの懐に手を伸ばした辺りから顔の表情と声がガラリと変わる。
男の声になるのだが、この声がくぐもったようで、どうにも台詞が聞き辛い。
もっと普通に地声を出せば良いのではないかと思うのだけれど…
名台詞の「月も朧に白魚の~」は廻り舞台を駆使して、何ともカッコ良く、演っている本人も気持ちの良さそうなものだった。

お坊の橋之助は、さっきとは別人のような色男ぶり。
福助のお嬢との遣り取りも、絶妙の間合いで、さすがに兄弟だと思わせる。

和尚の勘三郎。
すっきりとした立ち姿といい、歯切れの良い台詞廻しといい、さすがの出来。
捌き役としてのキッパリとした感じが、観ていて惚れ惚れする。
勘三郎の凄いところは、決して色男ではないのに(失礼)、カッコ良いと思わせてしまうところだ。
むりくりな理屈もこの人に言われると「あ~、なるほどそーかぁー」と思ってしまうし…
まさに口八丁の盗賊といったところを見せてくれる。

 
二段目
・割下水伝吉内の場
溺れたところを助けられたおとせが家に戻ると、そこには十三郎。
二人は喜ぶが、実は十三郎は伝吉が捨てた実子で、おとせとは双子の兄妹。
伝吉は運命を呪う。
一方、伝吉のもうひとりの息子である和尚は、土左衛門伝吉の話を聞いて、百両を押し付けて去る。
その百両を見つけて憤慨した伝吉が門口にやってきた、男を和尚吉三と間違って投げつけたが、それは研師与九兵衛だった。


伝七の笹野高史、なんとも陰鬱な過去を背負った人物を見事に表現している。
前回の弥十郎とはまた違った暗い男を見せる。
十三郎が実の息子だと知った時も、歌舞伎役者のあからさまな驚きとは違って、暗い瞳でその因果を呪っているような顔だ。
勘三郎がたっての願いでこの配役を彼にした理由が、ここにあるような気がした。
今回、彼は初めて本格的な見得を切ったそうだが、やはりここでは迫力不足とキッパリとした型が出来ていないのは否めない。
しかし毎日幕間に練習しているそうなので、後半になるにつれてきっと良くなっていくだろう。

この伝吉内の場では、照明が見事!
まるで蝋燭の明かりでの芝居を観ているような感覚にとらわれる。
舞台前方にある面明かりが芝居をしている人の前にススーッと動き、下から照らし出される者の顔はちょっとホラーちっく(笑)。
しかし心の闇までも見せてくれるような効果を醸し出す。
特に伝七が過去を独白する箇所では、それが絶大なものとなる。


・本所お竹蔵裏の場
研師与九兵衛は思いがけず手に入った百両を帰り道にお坊吉三に奪われる。
お坊は後を追いかけてきてその百両を貸して欲しいと頼む伝吉を斬り殺してしまう。


研師与九兵衛の亀蔵は、この場でもはじけまくってる(笑)。
着物から下穿きまで脱ぎ、下帯ひとつの姿に…
意外に筋肉質だったのには、びっくり!(笑)。

基本的には照明が素晴らしい舞台であるとは思ったが、伝七がお坊に殺される場面ではバルコニー席では光が足りずに、とても観辛くなってしまっていたのはかなり残念。
しかしながら、きっと江戸の闇とはこんな感じだったのだろう。
この暗さが、江戸の人々が抱いていた「闇の恐れ」を彷彿とさせる。


・巣鴨吉祥院の場
追われる身のお嬢とお坊は和尚のいる吉祥院へたどり着き、初めて伝吉が和尚の父であり、おとせが和尚の妹であったことを知る。
和尚に対する申し訳のなさに互いに死のうとする。


堂守源次坊の山左衛門、飄々とした雰囲気と細かな演技が素晴らしい。

お坊の橋之助とお嬢の福助は、前回は膝枕をする場面でもっと危うい雰囲気だったのだが、今回はそういう感じは出していない。
筋書でも福助が語っていたが、自分の分身を見るような目で相手を見ている。
それ故に一緒に死ぬということを納得出来るのだろう。

おとせと十三郎は、この配役の方が前回よりも互いにニンなのだなぁーと感じさせる。
親に因果を引き受けてしまった薄幸な兄妹を実に健気に演じている。
この健気さがこの後の悲劇をより一層引き立たせている。

和尚の勘三郎、おとせと十三郎から聞かされ、次々と明るみになっていく因果な縁を聞く表情が秀悦。
そしておとせと十三郎を殺しに行く時に「雪になりそうだな…」と呟く表情が何とも哀しげだ。
2人の首を両腕に抱えて戻って来た時には、目を真っ赤にして既に大泣きをしていた。
役への凄まじい入り込みを感じさせる。
思わず一緒になって貰い泣きしてしまった…

何と言ってもこの場は光と闇、そして色彩の美しさを特筆すべきだろう。
暖をとる薪の赤、お嬢とお坊が死のうとする時に敷いた布の橙色、そして和尚がおとせと十三郎の首を持って来た時の赤い照明と音楽。
闇の黒と赤い色のコントラストと音のショッキングさが、いつもの歌舞伎にはない人物の心の奥底を表現している。
 

大詰
・本郷火の見櫓の場
和尚は畜生道に落ちた十三郎とおとせの首をはねてお嬢とお坊の身代わりとし二人を逃がすが、企みは露見し、雪の降りしきる本郷火の見櫓下で捕り手に囲まれてしまう。
そして三人刺し違えて果てるのだった。


お嬢が冒頭で語ったように「八百屋お七」を連想する、櫓太鼓と薄墨色の空と真っ白な雪。
そして白い衣装の三人。
ところで、お坊とお嬢って、会う度ごとに「会いたかった~」と感激してるんだけど、前回別れてからそんなに時間経ってないのよねぇ~(笑)。
せいぜい1ヶ月とか数日とかそんな単位だと思うんだけど…

立廻りでかかるギター音ギュンギュンのハードロックと、鼓と太鼓のアンサンブルが何とも素晴らしい。
私が座っていた位置からは下座の鼓を打つ方が見えたのだが、立ったままものすごーい勢いで打っていた。
ただ、ここではヴォーカルは無いほうが良かったように思う。
いよいよ、ここまで…と悟った三人が宙を見つめての無音の間。
いったい彼らは何を見ていたのだろう…
そして互いに刺し違えて、お嬢とお坊の上に自らの着物を掛けた和尚…
着物の絵柄にはラインストーンが縫いこまれた目が光っている。
「眠れよい子や~」と椎名林檎が書き下ろしたという『玉手箱』という音楽が流れる。
その上に倒れこんだ和尚…
三人に雪が降り積もる。
感動的な最後だった。
歌舞伎の「三人吉三」では無い、そのラストシーンだった。
そして前回コクーンで上演した時よりも、更にインパントのあるラストだった。


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コメント 8

まりか

こんばんわ~私もいきました「コクーン串田歌舞伎」!コクーンは面白いと聞いてはいましたが、「感激しました!!」  ラストの「白の世界」では「幽体離脱したみたいに、身体が浮、音が聞こえなくなってしまい、大きな拍手で、気が戻り泣いてました。」泣。勘三郎丈の最初の「役の扮装姿は、亡き先代勘三郎丈と見違いました。」出演者の皆さん「とても良かったです~」。兄弟同士の「恋人、福助丈と橋之助丈、勘太郎丈と七之助丈の絡み、ドキドキしてしまいました~」最後に「芝のぶちゃん素敵でした~」いい~若衆姿いい~かっこいい~(あ~よだれが・・・)。
by まりか (2007-06-18 23:26) 

愛染かつら

まりか様
こんばんはー。
まりかさんも行かれたのですねー、コクーン。
とっても感激されたようですが、本当に良かったですよね!
兄弟で恋人同士とか、親子で恋人同士とか、考えてみたら歌舞伎の世界って凄いことしますよね。(笑)
芝のぶちゃんは立役でも素敵でしたねー。
立廻りも良かったです。
by 愛染かつら (2007-06-19 01:39) 

mami

愛染かつらさん、こんばんは。
海老名軍蔵、橋之助だったんですね。プログラムを買わなかったので、誰かわからなくて(笑)。あんなさんまちゃんみたい(私もそう思いましたよ!)な役者さんいたっけなあ、とずっと考えていました。まさか橋之助とは…。絶句…。

ほんとうに照明がよく考えられていて綺麗でしたね~。普通の歌舞伎ももうちょっと工夫しても良いのになあ、と思いながら見ていました。
コクーン歌舞伎は、歌舞伎座などのとは違った面白さがありますね。

TBさせていただきます~。
by mami (2007-06-20 00:25) 

愛染かつら

mami様
こんにちはー。
昨夜はメンテ中でコメント出来ずにレスが遅くなりました。

海老名軍蔵の橋之助さんはまるで別人でしたよねぇ。
私は前回の「三人吉三」での映像を見ていたので「誰?!」とならなかったのですが、知らなかったら絶対に分からなそうです。

照明は私の座っていた位置では、かなり暗い印象でしたが、それがこの話には合っていたようにも思えます。
by 愛染かつら (2007-06-21 12:11) 

coco

こんにちは。
冷静かつわかりやすいレポ、拝読いたしました~
先週末行ってきました。開演前に海老蔵さんを見かけて(観劇されていたようです)、一人ミーハー気分盛り上がっていたところに、書いていらっしゃるとおり十三郎が客席をさまようところで・・・ 勘太郎さんが私のとなりに!へたりこまれてしまいました[あわわ]

という、コクーンの平場席を、今年も目一杯満喫(いやそれ以上・・)しました。吉祥院から大詰、ほんとうに素晴らしかったですね!!!
by coco (2007-06-21 12:24) 

愛染かつら

coco様
こんにちは~。
ご拝読ありがとうございますー。

海老蔵さん、観に行ってらしたのですねー。
今月はお稽古月ですから比較的に余裕があるのかも知れませんね。

ところで十三郎が隣に座りましたかー。
それは思い出深い公演となりましたねぇー。
平場席は疲れますが、舞台との垣根が低くて臨場感は味わえますものね。
by 愛染かつら (2007-06-21 14:00) 

もこもこ

今夜雪樹さんと見てきましたっ
愛染さんの細かいレポをよんで反芻してます。すばらしい舞台でしたね。
海老名軍蔵、顔を見てたら全く誰か解りませんでしたが、声を聞いて「橋之助だっ」と思わず口走ってしまいました。びっくりの特殊メークでした。

今回は土間席、特においしいですね。
雪を浴びてる様子を後ろから見ていてうらやましかったです。今日は、十三郎が身投げするシーンで池に落ちちゃって、、、あれってほんとは落ちない演出なのでは?あとで伝七が、浅いからどうのこうの、と言い訳してました。因果話ではありますけど、楽しませてもらいました。
by もこもこ (2007-06-22 00:46) 

愛染かつら

もこもこ様
おおっ、とうとうもこもこさんと雪樹さんも?!
本当に素晴らしい舞台でしたよね。
とっても感動しましたー。
前回の「三人吉三」を映像で見た時にも、「面白いなぁー」と思っていたのですが、やはりナマは違いますね。

橋之助さん、まるで別人でしたよね。
確かに声で分かりますけど…

今回は特に平場席は良かったのではないでしょうか。
舞台と一緒になっているような感覚ですものね。

十三郎は私が見たときには落ちていませんでしたよー。
ギリギリのところで踏ん張ってましたけど…
今日は勢い余って落ちちゃったのかなぁー。
by 愛染かつら (2007-06-22 01:49) 

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